『私がジカブキに感じること』木村繁(演出家)

by Shigeru Kimura 

東美濃の地歌舞伎にふれて"これはすごい"と感じいったことがあります。

 

 その一つはそれぞれの保存会を指導される師匠方がいらっしゃって、その保存会にしかない科白回しや所作や衣裳があって、山一つ越えた隣町なのに独自性を持って演じられていることです。そんなに拝見したわけではないのですが、白浪五人男の作り方でもより演劇的であったりより舞踊的な要素が強かったり随分印象が違います。師匠が違えば衣裳小道具のデザインも違うと言うこの地域独特の意気込みが感じられます。また、役者さんたちがそれぞれの独自の型をほこりに精進している姿に芸能魂を感じます。私は青年期に歌舞伎に触れた経験があり、そのせいか伝統芸能にかかわる仕事が多いのですが、近年少々気になっている事があります。それは地方の文楽が大阪の文楽の人形遣いを師匠として定期的に招き、その技術指導を継承の柱にしていることです。監督官庁もそれを助長するかのように助成を続けています。地方の文楽のなかには大阪の文楽より古いものもあるし独自の操作法もあるだろうに、この金太郎飴現象は私にはつらいものです。東美濃の地歌舞伎がますます各保存会の独自性を発揮して私たちを楽しませてほしいと思います。

 

 二つ目は加子母の明治座をお借りした時、大道具さんという職分が健在なのが嬉しかったです。商業劇場でも御園座のような古くからの独立の小屋には大道具さんがいて、私たちが東京で仕込んでも道具は持ち込むことはできません。すべて小屋で作って貰い飾って貰うのです。一見古い体質のようですが、"劇場"とは芝居を作り大道具も作り衣裳や鬘も持っているからこそ"劇場"なのです。芝居づくりに必要な人材がいてこそ“劇場”なのです。海外でも演劇やオペラの劇場は同じ機能を持っています。各地に乱立する新しい文化会館はホールだけが立派でも中身が欠如して貸会館に甘んじています。この地方の地歌舞伎小屋には"劇場"が本来あるべき姿が引き継がれているのです。私たち演劇に携わる者にとってこの地域の地歌舞伎と地歌舞伎小屋は注目すべきものです。

 

 私は2009年から演劇CAMP in 中津川の仕事で中津川に通って来ました。こんな素晴らしい文化を継承している町こそ、日本一の文化都市になって欲しいと思います。

筆者紹介

  木村 繁(きむら しげる)

  前進座、東宝現代劇戯曲科ではじめて歌舞伎に触れる。演出家として現代演劇のほか文楽、狂言、日本舞踊などの台本、演出も多い。文化庁舞台芸術創作奨励賞佳作、名古屋市文化奨励賞、松原若尾記念演劇賞他受賞多数2009年から演劇CAMP in中津川実行委員長として中津川市に通う。日本演出者協会理事。