【時代物】敵討ちはどうなった?

元塩冶家の国家老・大星由良之助は、仇討ちの心がないと敵方の目を欺くため、今日も祇園の一力茶屋で遊興三昧の日々を送っている。一方、元塩冶家の筆頭家老・斧九太夫は、敵方・高師直(こうのもろのう)のスパイとなっていて、師直の家来・鷺坂伴内とともに、由良之助の真意を探るために一力茶屋に来ている。

由良之助のもとを訪れているのは、一日も早く仇討ちをと血気にはやる三人の侍。由良之助の思いも知らず、その放蕩ぶりにただ怒り心頭、切りかからんとするところに平右衛門が出てきて、思い止まるよう懇願しその場を収める。小身の身ながら敵討ちの一味に加わりたい一心の平右衛門が何度も願えど、由良之助は全く取り合うこともなく寝てしまう。

そこへ由良之助の嫡子・力弥が顔世御前(かおよごぜん=塩冶判官の妻)からの文を届けに来る。由良之助は辺りを気にしながら文を読み始めるが、これを酔い醒ましのために二階にいた遊女・お軽が、興味本位で鏡に映し読んでしまう。また、縁の下からは斧九太夫が。その時、お軽のかんざしがバッタリと落ち、由良之助はとっさに、お軽と九太夫の気配に気付く。

お軽が同じ仇討ちの同志である早野勘平の女房であることも、平右衛門の妹であることも知らない由良之助は、敵に知られては一大事と、お軽の口を封じようと身請け話を持ち掛ける。

何も知らずに、親元に身請けされることを喜んでいるお軽のもとに、再び平右衛門があらわれる。平右衛門は、最初は妹とは気づかなかったが、色々あって再会となる。再会の嬉しさに、親や勘平のことをあれこれ尋ねるお軽に、平右衛門はなかなか本当のことが言えない。しかも、話の途中、身請け話の事を聞き、大事を知られた由良之助が、秘密を守るためにお軽を身請けし、後で殺そうとしていることを察する。

そういうことならと平右衛門は、いっそ自分がお軽を殺し、その功績で一味に加えてもらおうと決心。いきなり切り掛かる平右衛門に、訳も知らず切られることはできないと言うお軽。とうとう平右衛門は隠しきれず、親の死と夫・勘平の無念な最後のことを話す。すべてを知り、生きる望みを絶たれたお軽は、死のうと覚悟する。

奥で始終を見ていて、二人の心を察した由良之助は、縁の下に隠れている九太夫を引きずり出して、お軽に殺させ、平右衛門を仇討ちの一味に加える。

主な登場人物

大星由良之助(おおほし ゆらのすけ)
元塩冶家の国家老。主君の仇討ちの機会をひっそりと狙っている。

寺岡平右衛門(てらおか へいえもん)

由良之助の仲間に加えてほしい。

お軽(おかる)
平右衛門の妹で、早野勘平の妻。勘平の軍資金ために、身売りして遊女となっている。

大星力弥(おおほし りきや)

由良之助の嫡子。

斧九太夫(おの くだゆう)

元塩冶家の筆頭家老。今は敵方・高師直(こうのもろのう)のスパイ。

●矢間重太郎(やま じゅうたろう)
 元塩冶家の侍。

 

●千崎弥太郎(せんざき やたろう)
 元塩冶家の侍。

 

●竹森喜多八(たけもり きたはち)
 元塩冶家の侍。

解説

『仮名手本忠臣蔵』は赤穂事件を元にした義太夫狂言。南北朝時代という設定で吉良上野介(きら こうずけのすけ)を高師直(こうの もろのう)、浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)を塩冶判官、大石内蔵助を大星由良之助と名を変えて上演された。