【時代物】命を捨てて娘の幸せを祈る父親

雪の山科。加古川本蔵の女房・戸無瀬が小浪を伴い大星由良之助の住まいを訪ねてくる。

由良之助の妻・お石は機嫌よく迎えるが、戸無瀬がかねて許嫁の力弥と小浪の祝言話を切り出した途端に様子が変わり、身分が違うなどと言い出す。
突然のことに戸無瀬が納得いかず言い争いになり、お石は遂に本蔵が師直(もろのう)に賄賂を贈ったことに触れ、破談を告げてその場を立ち去ってしまう。

戸無瀬はあまりの腹立ちに小浪に他家への嫁入りを勧めるが、小浪は力弥以外に夫は持たぬと聞き入れない。途方に暮れ、ついに戸無瀬は、この場で小浪の首を討ち、自分も死のうと覚悟を決める。外に虚無僧の尺八が響く中、もうこれまでと刀を振り上げたその時、思いもかけない「祝言を許す」というお石の声が

ほっとしたのもつかの間、お石は「本蔵が抱きとめたから主君が遺恨を晴らせなかった」とその非をなじり、聟(むこ)への引き出物に本蔵の首が欲しいと難題を突きつける。

そこへ、外の虚無僧(実は本蔵)が声を掛け家に入ってきて、お石に向かっていきなり激しく愚弄する。聞くに堪えかねたお石は槍を構えて立ち向かい、結局、力弥が本蔵の脇を突き通す。実はここには本蔵の深い思いがあるのだが、奥から現れた由良之助は、その本蔵の真意を「聟(むこ)力弥の手にかかりさぞ満足であろう」と見事見抜いてみせる。

本蔵は、良かれと思い判官を抱きとめたことが裏目に出て、かえって無念の死を遂げさせたと嘆く。そんな本蔵に心を許した由良之助は、裏庭の雪で作った二つの五輪塔を見せ、必ずや仇討ちを果たし親子共々死ぬ覚悟であることを打ち明ける。すると本蔵は、力弥への婿引出にと、敵方・師直(もろのう)の屋敷の絵図面を手渡す。

由良之助は、力弥と小浪を祝言させることを伝え、絵図面が手に入った上はすぐにも鎌倉へ出立すると語り、本蔵が着てきた虚無僧の姿に身をやつし、本蔵が息を引きとる中、皆に思いを残し旅立っていく。

主な登場人物

戸無瀬(となせ)

本蔵の妻。

小浪(こなみ)

本蔵の娘。

 

お石(おいし)
由良之助の妻。

りん
下女。

大星由良之助(おおほし ゆらのすけ)

 元塩冶家の国家老。主君の仇討ちの機会をひっそりと狙っている。

 

●大星力弥(おおほし りきや)
 由良之助の嫡子。

 

●加古川本蔵行国(かこがわ ほんぞう ゆきくに)
 桃井家臣。

 

●供侍(ともざむらい)

解説

『仮名手本忠臣蔵』は赤穂事件を元にした義太夫狂言。
南北朝時代という設定で吉良上野介(きら こうずけのすけ)を高師直(こうの もろのう)、浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)を塩冶判官、大石内蔵助を大星由良之助と名を変えて上演された。