【時代物】キレる弟とクールな兄。2人の敵討ち物語

安元2年伊豆の国赤沢山で、工藤左衛門祐経のために最期を遂げた河津三郎祐康の子、曽我十郎と弟曽我五郎兄弟が、父の敵工藤を討たんと苦心している。

今日折しも工藤左衛門祐経は富士の御狩の総奉行を命じられその祝儀のため、諸大名が参上、祝宴を開いている。
その席へ朝比奈三郎義秀のはからいで曽我十郎と五郎が参上、宿願の仇に対面することができる。

血気にはやりかかろうとする五郎、これを抑えてじっと耐える兄の十郎、対照的な兄弟の無念やる方ない思いと、歌舞伎独特の演出で表すところが最高の見せ場。

祐経は、総奉行の役目が済むまでは討たれるわけにはゆかないと言い、口惜しがる兄弟に紫のふさ包みを投げ与える。
中には富士の御狩の通行手形が入っていた。
祐経は富士の裾野の狩場で会うことを約束し、絵面に形が決まって幕となる。

主な登場人物

曽我十郎祐成(そがの じゅうろう すけなり)

河津三郎祐康の子。父の敵工藤を討つ若侍。温厚で沈着冷静。クールなお兄ちゃん。色男。

曽我五郎時致(そがの ごろう ときむね)

河津三郎祐康の子。十郎の弟。活発で剛毅。気の短いやんちゃな弟。

 工藤祐経(くどう すけつね)

源頼朝の家臣。河津三郎祐康を殺した、曽我兄弟の敵。座頭役の分別ある侍。

朝比奈三郎義秀(あさひな さぶろう よしひで)

兄弟を工藤に引き合わせる侍。ちょっと陽気な、気の良いおじさん。

舞鶴(まいづる)

朝比奈の妹。朝比奈の代わりに舞鶴が出るバージョンがある。

大磯虎(おおいその とら)
遊女。曽我兄弟に同情的。十郎の恋人。

化粧坂少将(けわいざかの しょうしょう)
遊女。五郎の恋人。

梶原平三景時(かじわら へいぞう かげとき)
態度のでかい、源頼朝の家来。

近江小藤太成家(おうみの ことうた なりいえ)
工藤祐経の家来。

八幡三郎行氏(やわたの さぶろう ゆきうじ)
工藤祐経の家来。

解説

建久4年(1193年)、源頼朝が行った富士の巻狩の際に御家人・工藤祐経が曾我十郎祐成・曾我五郎時致の兄弟に仇討ちされた事件を題材としている。

事件は間もなく全国に広がり能や人形浄瑠璃で演じられた。歌舞伎としては延宝4年(1676年)に初代市川團十郎が江戸中村座で演じたのが初演で、以来江戸歌舞伎では初春興行で上演されることが慣例となった。

上演回数が多かったため多様な演出形態が派生したが、現在の台本は河竹黙阿弥によって整理され、明治36年(1903年)に上演されたものが原型となっている。歌舞伎の様式美に満ちあふれた華やかな演出、曽我兄弟が御霊神(ごりょうじん)として信仰対象となったことなどから新春の祝祭劇としてふさわしい演目である。

書割は工藤館の背景で、金の襖には工藤氏の家紋「庵に木瓜(いおりにもっこう)」が描かれ、外には富士の裾野が広がる。