あらすじ

野崎村の百姓の養子・久松は、大阪へと住み込みで働きに出た先の娘・お染と恋仲になった。しかし身分の違う2人の仲は認められるものではなく、久松は金銭の不手際があったとして実家に帰され、養父・久作の後妻の連れ子・お光と結婚することになっていた。その日、久松を慕っていたお光は、嬉しそうに祝言の食事の準備をしていたが、そこへお染が久松を追ってやって来た。お光は玄関でお染を追い返そうとするが、嫁入りの支度のために奥の間へ連れていかれてしまう。その隙に部屋へ上がりこんだお染は、一緒になれないのなら死んだほうがましだと久松へ思いを訴え、一度は自分のことを諦めるように説得しかけた久松も、ついには共に死んで思いを遂げる決心をする。それを奥の間で聞いていた久作が、過去の心中話を例に人の道に背くようなことは諦めるよう2人をたしなめ、2人はそれを受け入れる。しかし、その実2人で死ぬ決意は変わっていなかった。その話を聞いていたお光は、自分が引き下がれば2人とも死ぬことはないと、尼になって久松を諦める決意をする。お染は、自分さえいなければと死のうとするが、止められる。娘を連れ戻しに来てその様子を偶然見ていたお染の母は、そこまで思っているのならと2人の仲を認めるといい、世間に知られないように、お染は舟で、久松は駕籠で、大阪へ帰ることとなった。それまで気丈に振る舞っていたお光であったが、2人の姿が見えなくなると、泣き崩れて父に縋るのであった。

主な登場人物

久作(きゅうさく)

野崎村に暮らす百姓。久松の義父。お光と久松の結婚を決めた。

 

お光(おみつ)

久作の義理の娘。久松のことが好き。

 

久松(ひさまつ)

久作の養子。働きに出た油屋で、雇い主の娘・お染と深い関係になる。

 

お染(おそめ)

久松が勤めていた油屋の娘。野崎村まで久松を追ってきた。

 

解説

近松半二作の人形浄瑠璃が元で、実際にあった心中事件を題材としている。