【時代物】恋した乙女の一途な情念

義峯とうてなは、生麦村で悪者に襲われるが、義興の旗持ちだった久作の機転で矢口の渡しまで落ち延び、渡し守頓兵衛の家に一夜の宿を求めた。娘のお舟は義峯とも知らず、一目惚れし激しい恋心に燃える。

 頓兵衛は義峯を殺して手柄にしようとするが、お舟がその身代わりとなり義峯らを舟で逃がす。頓兵衛は怒り、討手を集める合図の狼煙をあげ後を追う。お舟は深手を負いながらも囲みを解く合図の太鼓を打ち鳴らす。

主な登場人物

頓兵衛(とんべえ)

矢口の渡し守。義峯の兄・義興を殺した。
娘を殺してでも金がほしい強欲じじい。

お舟(おふね)

頓兵衛の娘。一目惚れした男を命を懸けて守り抜く、一途な情熱娘。

 新田義峯(にったよしみね)

頓兵衛に兄を殺されている。悪者に追われて逃亡中のイケメン。

●うてな
 遊女。義峯の恋人。義峯と共に逃亡中。

 

●六蔵(ろくぞう)
 頓兵衛に仕える下男。お舟に惚れている間の抜けた兄ちゃん。

解説

江戸時代中期の学者・平賀源内(ひらがげんない)が福内鬼外(ふくうちきがい)のペンネームで、多摩川のほとりの矢口の渡しで横死を遂げた新田義貞の子義興を祀る新田神社の宮司に依頼され書いた五段続きの時代物の江戸浄瑠璃。この浄瑠璃のお陰で荒廃していた新田神社の修復がたちまち出来たと伝えられる。

 『太平記』にある新田義興が竹沢・江戸らに、武蔵の国矢口の渡しで謀殺されたこと、その後日譚である義興の弟義峯や遺臣の苦心談を、新田神社の縁起に結び付けて作られたもの。