【時代物】三つ子の数奇な運命

平安時代、延喜帝の御代に、政治は左大臣・藤原時平(ふじわらのしへい)と右大臣・菅丞相(かんしょうじょう/菅原道真)とが勢力を二分していたが、菅丞相は時平の陰謀により左遷されてしまう。

菅丞相に仕える家に生まれた三つ子は、天下泰平の吉相を持ち、舎人(とねり/高位の人に仕えて警備・雑用などをする人)にすれば帝の守りになるといわれ、松王丸は時平、梅王丸は菅丞相の、桜丸は斎世親王の舎人になっている。
ある時、梅王丸と桜丸が吉田神社の近くで行き会う。梅王丸は菅家の再興に奔走する一方、行方不明になっている御台所を探し菅丞相のもとへ行きたいと考えていた。一方桜丸は、自分が菅丞相が左遷される原因を作ってしまったことを悔い、死をもって詫びようとしていたが、その時期を逸していた。二人は、間もなく開かれる父の七十歳の賀の祝いに三人兄弟夫婦そろって祝うことが何よりの親孝行であるから、今は互いに我慢すべきと話し合う。そこへ吉田神社へ参詣を終えた時平の行列が差し掛かり、二人はこれを襲う。しかし松王丸に鎮められた上、牛車の中から出た時平のひと睨みに気圧されてしまう。時平は松王丸の忠義に免じ二人を許し、兄弟は、父の賀の祝いの後に決着をつけることを約束し、別れる。

 

主な登場人物

舎人 松王丸(とねり まつおうまる)

三つ子のひとり。しっかり者。

舎人 梅王丸(とねり うめおうまる)

三つ子のひとり。覇気があって喧嘩っ早い。

舎人 桜丸(とねり さくらまる)

三つ子のひとり。やや控えめ。

左大臣 藤原時平(さだいじん ふじわらのしへい)
菅丞相を策略にハメて失脚させた張本人。

舎人 杉王丸(とねり すぎおうまる)

 

●鉄棒曳き(かなぼうひき)

 

●仕丁(じちょう)

解説

『菅原伝授手習鑑』は、二代目竹田出雲(たけだいずも)三好松洛(みよししょうらく)、並木千柳(なみきせんりゅう)の合作。平安時代の菅原道真(すがわらのみちざね)の失脚から天神となるまでの話を柱にした、彼を囲む人々の物語である。

車曳きの場は、梅王丸が荒事(派手で力強さを誇張した演出)、松王丸が実事(誠実な人物を写実的に表現する演出)、桜丸が和事(柔らかで優美な演出)、というそれぞれの役柄にあった演技を見せる場であり、物語の内容というよりも歌舞伎の荒事の様式美が凝縮された見どころのある演目となっている。
また、時平は天下を目論む悪役で、公家荒れ(くげあれ)という高位の敵役の化粧で登場する。
『菅原伝授手習鑑』は『義経千本桜』、『仮名手本忠臣蔵』と共に義太夫狂言の三大名作とされている。